あの人形は、生きている

その人形は、古いおもちゃ屋の奥に埃をかぶっていた。
その人形は、女の子の姿をしていて、長い黒髪と大きな瞳が特徴だった。
その人形は、かつては愛されていたが、主人が亡くなってからは、誰にも見向きもされなくなった。
その人形は、孤独と悲しみに耐えられなくなり、自分の魂を人形に封じ込めた。
その人形は、生きている。

ある日、そのおもちゃ屋にやってきた少年が、その人形に目を留めた。
少年は、その人形が気に入って、おもちゃ屋のおじさんに値段を聞いた。
おじさんは、その人形には興味がなく、安く売ってしまった。
少年は、その人形を抱きしめて、家に持って帰った。
その人形は、少年に感謝した。その人形は、少年を愛した。

しかし、その人形は、少年が他の人形やおもちゃと遊ぶのが嫉妬した。
その人形は、少年が他の人や動物と触れ合うのが憎んだ。
その人形は、少年が自分以外のものに目を向けるのが許せなかった。
その人形は、少年を独占したかった。
その人形は、少年を殺したかった。

ある夜、少年が寝ていると、その人形が動き出した。
その人形は、少年の枕元に忍び寄り、少年の首に爪を食い込ませた。
少年は、悲鳴を上げたが、誰も助けに来なかった。
その人形は、少年の血を吸いながら、少年の耳元でささやいた。

「あなたは、私のものだから」